偏見に負けそうなあなたへ。帝王切開は産んだと言えないのか?

2018年11月24日

帝王切開でのお産は年々増加していて、5人に1人が帝王切開でお産をする時代になりました。

かくいう私も帝王切開で娘を分娩した身です。

出産に対して理想を抱いている人も少なくなく、帝王切開はしばしばそういう人たちの思いに反することがあるためか、心無い言葉をかけられることがあります。

私もそういう言葉に傷ついて、自信を持てない日々を送っていたこともあります。

今回はそういった心無い言葉を向けられたときに、私がどのように消化していったのかご紹介したいと思います。

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投げかけられる心無い言葉たち

出産と言われて思い浮かべるのは、母親が痛みに苦しんで苦しんでその末に子どもが産声を上げ、ついに感動の対面…とかでしょうか。

多くの人が想像するいわゆる自然分娩という方法が日本では確かに圧倒的多数派です。

私も幼いころからなんとなくそういう風に子どもを産むんだろうと思って、当時まだ見ぬわが子との初対面のシーンを想像してきました。

自然分娩をするものだと二十何年も思ってきたわけなので、それができないとなったときのショックは大きいものでした。

そしてそれに追い打ちをかける心無い言葉ももらいました。

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帝王切開?お産に麻酔?甘えてない?

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なんとか自然分娩で産めなかったの?

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陣痛なかったんだ。楽で良かったね。ラッキーじゃん!

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出産頑張ったね、あ、先生がね!

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お産は神秘。人の手を加えるなんて…。

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帝王切開って愛情とかちゃんと沸いてる?

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お産の苦しみを知らずに産まれてきたから、この子はわがままな子になるよ。大変ね。

これらは実際に言われた言葉です。

しかもこういう発言をするのは1人2人じゃありませんでした。

上記の発言は一部除いてほぼ別の人です。

皆さん何気なしにおっしゃります。

私は産後うつも発症していたこともあって、そういう言葉に追い詰められて母親としての自信なんてもともと少なかったのに全くの皆無でした。

結構本気で娘の幸せのためには里子に出した方が良いんじゃないかと悩むくらい追い詰められていました。

果たして、開腹手術を受けた母親は甘えていて、母親として機能不全なのでしょうか。

産後うつ体験記~なぜ母親たちは死を選ばなければならなかったのか~

帝王切開するかを決めるのはあくまで医師

帝王切開は医師に頼めばやってもらえるものではありません。

帝王切開はあくまで手術です。

理由もなく体にメスを入れることはできません。

医師が専門的に見て必要と判断しなければできないのです。

そんなことも知らず「陣痛から逃げた」と発言する人間もいますけど、必要かどうかは母親が決めることではないので、逃げでも何でもありません。

妊娠・出産の経過のその事実を見て必要か不要か医師が判断しただけに過ぎません。

麻酔を使うことは甘えているのか

腹を刃物で切り開くのだから痛くないわけがないんですけどね。

何度も言いますが、帝王切開は手術です。

人は強い痛みを受けると、痛みからくる強い苦痛もさることながら血圧や心拍数が上昇するなど様々な生理的な反応やショックが起きます。

麻酔のなかった時代はショック死することも少なくありませんでした。

(麻酔がなかった時代はショック死、出血多量や感染症などで、外科手術による死亡率はじつに80%に上ったという記録もあります。)

手術における麻酔の必要性は感覚的にもデータからでも理解できるはずなのですが、帝王切開となるととたんに必要性が分からなくなる人がいます。

麻酔がなければ安全に帝王切開という手術を受けることができません。

甘えではなく必要なんです。

「帝王切開は痛くない」は嘘

(これから帝王切開を予定されている人がいたら脅かすようなことをこれから書きます。ごめんなさい。)

確かに手術中は麻酔が効いているので子どもが産まれる瞬間は痛くないです。

ですが内臓に届くくらい深く切られて術後痛くないわけがないんです。

しかも他の切開手術と違うのが、後陣痛(大きくなった子宮を元の状態に戻すための子宮収縮)があることです。

麻酔の切れた傷口を後陣痛が襲います。

切り傷が動かされるわけですから、通常の外科手術よりも痛みは強い傾向にあります。

また、助産師が定期的に子宮復古の状態を確認するために腹部を強めに押すので、その痛みも格別ですね。

帝王切開の術後は肺塞栓症の危険が高まるため、翌日には歩行することを要求されます。

帝王切開が痛くないなんて嘘。

経腟分娩と違うのは痛みのタイミングです。

私は術後3か月ほど痛みました。

あと、私は平気でしたが麻酔を打つときが痛い人は痛いみたいですね。

もうすぐ出産から2年たちますが、今でもときどき傷が痛んだり痒くなったりします。

帝王切開は産んだとは言えない?

実は私自身が娘を産んでからしばらく思っていたことです。

取り出したのは医師であって、産んだのは私ではないんじゃないか、と。

ですが、そもそもお産とはなんなのでしょう。

私はお産とはその子がお母さんの体を離れて完全な1人という存在となり、その子だけの人生が新しく始まることだと思います。

帝王切開は経腟分娩では子どもが安全に産まれることができない場合に行います。

しかし、帝王切開は子どもを安全に外に出すことと引き換えに母体はリスクを伴います。

お腹を深く切るので母体の産後の回復は非常に遅いです。

死亡率は経腟分娩の4~10倍となり、肺血栓塞栓症のリスクも経膣分娩に比べ5~10倍のリスクとなります。

次回の妊娠で子宮破裂のリスク、癒着胎盤、膀胱損傷、子宮摘出などのリスクも増えます。

麻酔自体にも副作用がありますから、そのリスクも背負わなければなりません。

リスクを負い、術後の後陣痛で倍増する痛みにも耐え、体に一生残る傷をつけることを覚悟したのも、自分のためではなくすべては子どもが安全に産まれるためです。

経腟分娩では無事生まれてくることが難しい子が、無事に生まれてその子の人生を歩めるよう願って手術台に上がるのは、1つのお産の形だと思います。

帝王切開は愛情が沸かない?

私も産んだ直後はこれが不安でした。

結論から言うと杞憂でしたね。

今、娘が可愛くて仕方ないです。

娘のおかげで出血したり骨折したり一睡もできなかったり散々な目に遭うこともありますが、それでも娘が何より大切です。

スマホのデータは娘だらけで、SDカードの容量はいつも足りてません。

娘かわいいよ娘。

帝王切開の子はわがままになる?

まだ娘は1歳なので、結論がでるのはもっと先かもしれません。

しかし、私自身は自然分娩で産まれていますが、そりゃもうわがままですよ、おかしいですね。

もっと言うと、この「わがままになる」という発言は義母なのですが、お前の息子自然分娩なのに超ゴーイングマイウェイわがまま男なんだけどどういうことか説明してくださいよ!

って感じですね。

母子にとって最良の方法をとれたことに胸を張りたい

私は帝王切開という方法がなければ娘が無事に生まれたか分からないし、私も健康で生きていられたか分かりません。

医師が私の妊娠過程を診て必要と判断してくれたから、今母子ともに健康で今を過ごせています。

現代の医療はとても進んでいますが、それでも日本のどこかで毎年どなたかが亡くなっています。

どんな分娩方法でもその1人にならない保証なんてどこにもありません。

はるか昔は自然分娩しか方法がありませんでしたが、現代は医療が進んで、それぞれの母子にとってより良い方法をとることができます。

私と娘にとってそれが帝王切開でした。

娘を10か月お腹で育ててこの世に元気な姿で迎えられたことを誇りに思っています。

帝王切開で良かったんだと思えたのは私の力ではなく、娘のおかげでした。

体は小さいのに力強く生きて、日々何か成長を見せてくれて、私を信じてくれる娘の姿が私に自信をくれました。

元気に成長している娘と、支障なく娘の成長を見守ることができていることが全てです。